作品

ディアグラム(改)
第一話「勇者」
(66頁)
 森を抜ける頃には日が顔を出して空を嘘みたいにオレンジ色に染めていた。
 何気なく空を見上げていたアールは、先に歩くマントの男の背中を慌てて追いかける羽目になる。
 途中でダグラの小さい影は見なかったが、ちゃんとこちら側に戻って来れればいいけれどとソワソワとするアールに対して、マントの男は黙々と足を動かすだけだった。
 やっと人の営みらしき騒がしさを感じ目を凝らせば、先に地面に座り込む人の影が見えた。近づけば所々に立っていた同一のスーツ型の制服らしき服装の男女が目ざとく見つけ、一人が駆け寄って来た。
 ダグラを捜しに行く前に松明の明かりで見た服を着た『マニディール』の職員の人だ。
 職員はアールではなく、黒いマントの男の方に用があったらしい。涼し気な黒い瞳に疲れ一つ見せず淡々と職員の男の質問に頷いている姿があった。
 漏れ聞こえる声を総合すると、どうやら宿で討伐に出た人たちも狼の魔獣に襲われた等の話をしていた。村人が心配していたように最初から見捨てたらしいで無いらしいので、何故かホッとした自分がいるのにアールは気づいた。
「おにいちゃん!」
「え?わっ……!」
 不意に子どもの声が聞こえたかと思うと、足に衝撃が走った。倒れるまではいかないまでも、少しばかりよろけながらぶつかって来た何かに反射的に手を添えつつ見下した。
 そこにあった顔は森の中でも探したダグラの顔だった。眉を寄せながら、ギュッとズボンが皺になる程の力で掴んでいる。
 少し遅れて一歩一歩踏みながらやって来た荷馬車のおじさんは笑みを浮かべて、吊っていない方の手を軽く振っていた。

(66頁)
 ≪前 64  65  66  67  68 次≫ 
著:Kookcat 先生

≪作品TOPへ

▲ページの先頭へ戻る