作品

ディアグラム(改)
第一話「勇者」
(57頁)
 真昼並みに煌々と燃え落ちる幾つもの松明の明かりの間を忙しく走り回る制服らしき似た形の洋服を着た男女の姿があった。
 彼らは疲れた顔をして拓けた広場に集められた数十人の村人達に、温かいお茶を配ったり、毛布を配ったりしていた。中には、バインダーを片手に村人に話を聞いている者もいる。
 足を踏み入れれば、興奮とも安堵とも取れる喧騒に包まれながら、その場に村長を伴いながらアールは周囲を見まわた。そこは村長が避難しようと言っていた隣村だった。距離としては二、三キロという所だが、街道に近いそこはしっかりとした煉瓦造りの二階建ての家も多く、規模も先の村よりも軽く数倍はありそうで街に近い雰囲気があった。
「あ、村長!ご無事でしたか。村人の安否確認はすみましたから、今、助けに行こうかと相談していたんです。村の方も何やら明るくなっていて……」
 村長に気付いた一人の村の若者が、アールたちのもとに駆け寄って来た。同時に数人の村人も集まって、ホッとした顔を見せる。
 けれど、続く言葉に彼方の空に浮かぶ煙と夜明けかと間違う明るい色に、戸惑いの視線を向けた。その色の不吉さに村人の誰もが、村の惨状を用意に想像できたのだろう。
 村長はできるだけ安心させるように何事でもないかのように静かな声色で答えた。
「心配かけた。少しばかり状況が変わってな。村の方は作り直せばいいだけだ」
 軽く若者の方を叩いて元気づけようとする。叩かれた若者も、それ以上何も言えない様子で「はい」とどこか悟ったように小さく一言を吐き出して、また赤い空を見上げた。
「今は村のことより、村人たちは全員無事か?」
 しんみりした空気に包まれていた村人の意識を変える意図があったのか、村長は少しばかり表情を引き締めて村人たちに尋ねた。

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著:Kookcat 先生

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