作品

ディアグラム(改)
第一話「勇者」
(26頁)
 静止していた取り巻きを殴りつけ腕から脱出したおじさんは、怒鳴り声と共に握った拳をスキンヘッドの顔面に、問答無用で叩き付けていた。が、拳の威力はスキンヘッドには堪える程のものではなかったらしく、よろけることもなかった。行商の仕事で力仕事をしていると言っても、戦う仕事をしているスキンヘッドには遊戯にも近いほど拙いものだっただろう。
 拳を顔面で受け止めたスキンヘッドは、おじさんの腕を捻りながら鼻で笑った。顔は笑みを形作っているが、浮いた青筋は健在で目にも剣呑な光が宿っている。抵抗空しく本来曲がらない方向に曲げられた腕におじさんの低い呻きが聞こえた。
「金勘定だけをしている商人ごときが、舐めてんじゃねぇぞ」
「この商人の国である『共和国』で商人を馬鹿にするとは、何様のつもり、……がはっ!」
 挨拶代わりだと捻っていた腕を力任せに引っ張り、スキンヘッドはおじさんを床に引き倒すように腕にダメージを与えた。肩が外れただけなのか、それとも骨が折れる程の重症なのか、床に膝をついたおじさんは捻じ曲げられた肩をもう片方の手で押さえ苦痛に顔を大きく歪めていた。冷や汗を浮かべ痛みに苦しむ姿に、更に追い打ちをかけるようにスキンヘッドの足が背に炸裂する。
「はっ、口だけが達者だな。なぁ、え?」
 踵落としに似た蹴りが叩き込まれ、おじさんの膝が崩れ、汚れた床に体を丸めた。倒れた後も、痛めつける手は止める気がないのか、二度三度とその背を無慈悲にも踏みつける。少しでもダメージを軽減するためか、腕よりも庇い身を丸めるおじさんに、自分が殴られかけた時よりも泣きそうなダグラの悲痛な叫びが上がった。

(26頁)
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著:Kookcat 先生

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