作品

ディアグラム(改)
第一話「勇者」
(16頁)
 話している間に目的地に着いたのか、荷馬車を通行人の邪魔にならないように路肩に止めた。改めて見渡せば、そこは広場になっているのか、道幅が三倍くらいに広がり圧迫感も軽減されていた。ふと広場から少しばかりさらに村の奥へ続く道の先に、鎮座している煉瓦づくりの二階建ての横にも広い建物に気が付いた。他の家とは離れているということもあるが、その周りだけ馬車や荷台が置かれ、村人というには些か目つきの鋭い男達が多いような気がして首を傾げる。
「……あれは?」
 気になった建物を指さして、おじさんを振り返った。馬の背を撫で落ち着かせていたおじさんが、腰に片手を当てながら指の先に目を凝らし。
「ああ、あれは、この村唯一の宿屋兼食堂だ。今夜、わしらが泊まるのもあそこだから、一仕事が終わったら案内してやるさ」
 そう言いおじさんは荷台に入り込み、縛っていた紐を解いていっているようだった。紐を解き終わらせると、近くにいた幼子のダグラを呼び寄せ小さな箱を「気をつけろよ」と言いながら手渡し、それ以外の大きな荷物は荷台の入口に寄せ始めた。案内してやると待てをかけられ、ボンヤリと荷物を下ろす準備を見守っていたが、手持無沙汰に耐え切れなくなり、中の荷を整理し外に下りて来たおじさんに声をかける。
「お邪魔でなければ、荷物下ろすの手伝いましょうか?」
「いいのか?結構重いと思うぞ」
「大丈夫です。これでも、ちょっとは体力に自信あります」
 荷台から飛び降り首を傾げるおじさんに、袖を捲りあげながら頷き返した。そういうおじさんは、荷台の入口に寄せた木箱の一つを担ぎ上げ、もう片方の手で一箱を軽々と持っていた。片手で持てるくらいの荷物ならばと気合を入れて、荷馬車に上がらないままでも手が伸ばせた木箱を一つ両手で持ち上げた。が、その重さにすぐによろけてしまう。
「よっと……っと、と!?」
「おい、おい、大丈夫か?無茶はするなよ」

(16頁)
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著:Kookcat 先生

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