甘い狼の幸せな苦悩
狼さんがくれたもの
(42頁)
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あたしは中学生の頃、生まれて初めての恋をした。その相手はとても仲良しの男の子で、隠し通すことができてなかったらしいその気持ちは、誰がどんなふうに言い始めたかも分からない勝手な噂になって、その人の耳に入ってしまい……
忘れ物を取りに戻った放課後の教室で、聞いてしまった話し声に、あたしは足が動かなくなった。
「ただの噂じゃん」
「マジで好かれてたらどうする?」
「誰があんな奴、絶対無理だって! マジ勘弁」
「だよなー? あんなのに好かれるとか有り得ねぇよ」
ついさっきまで、楽しくふざけあってたのに。楽しくお話ししてたのに。なのに本当はそんなことを思ってたなんて……知らなかったよ。頭の中が真っ白になって、どうやって帰ったのかも覚えてなくて。
だけど失恋したことが悲しかったわけじゃなかったんだ。そんなことじゃない。ショックだったのは……
思い知らされたこと。
───あたしは恋をしちゃいけない……
だから、一生懸命に気づかないふりをしていた。大きくなるばかりの想いが、溢れないように心に蓋をした……
怖いから。嫌悪に満たされた拒絶の言葉を聞くよりは、そっちの方が楽になれるから。
好きになんてならない、なれるわけがない。
そう決めていたのに、それを貫くほどの強さを持っていなかったあたしの意思は……
あまりにも乱暴で強引なあの言葉で、打ち砕かれてしまった。
「惚れてんの」
心臓が壊れちゃうんじゃないかと、本当に思った。
「責任持って俺とつきあえ」
思考停止ってこういうことを言うの……?
何も考えられない。
威圧感のある目と口調、ジリジリと近づいてくるハルが恐くて、無意識のうちに涙が出た。
恐い…… 踏み込むのも、信じることも。
だってそんなわけない。あたしのことを好きだと言ってくれる人がいるわけない。自分が一番よく分かってる。
信じたら笑われる、また同じ思いをするのは……
恐い、恐い、恐い…… いっそのこと逃げてしまおうか。
(42頁)
著:凛梨 先生
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